第483回 あかりの演出 「昼と夜のあかり」 2015.10.09
放送日:2015年10月9日
「昼と夜のあかり」
10月に入り、日の沈む時間も日々刻々と早まって、秋の深まりを感じさせるようになってきました。夜の時間も長くなり、秋の夜長と言ってご家庭で夜を楽しむ時間も増え照明がより活躍する季節となりました。
秋は季節の変わり目として、気温の変動や天候も変わりやすく、身体に支障をきたしやすく、また窓から入る自然光も安定しないことから、気分も浴びる自然光の量に影響して不安定になりがちとなります。
そこで、今回はこれからの季節、1日をより快適に過ごす為の照明手法に合わせて「昼と夜のあかり」と題しまして、それぞれに適した「あかり」とは何か?
お伝えしたいと思います。
もともと人は、朝から日中にかけて白く明るい光を浴びることで自律神経系の交換神経が働き、快活で活動的な気分になります。また雨や曇りのような薄暗い朝は目覚めも悪く、仕事や学校に行きたくない気分になる傾向があります。このような気分にさせる要因の多くは光による影響が大きいといえます。
そのため、室内に入る自然光の量に合わせ室内の人工照明で明るさを補い調整することをおすすめします。
家の照明はとにかく暗い場所を明るく照らす事ができれば良いとお考えの方も多いと思いますが・・・
実はオフィスや店舗など、決まった目的で、ある程度決まった時間に限って使用される照明の照らし方と違い、家の中の照明は、朝、昼から夜まで1日を通して快適に過ごす為に、明るい日中を過ごす照明と、夕方から夜にかけて暗くなった時の照明と、大きく分けて「昼のあかり」と「夜のあかり」の2パターンの明るさ感が必要となってきます。
人は長い人類史の中で火の光や太陽の光を浴びずっと生活してきました。その為、人工光源が開発され、夜でも昼ように明るく白い光の中で生活できるようになった現代になっても、太陽の軌跡、1日の時間の経過とともに太陽光に合わせた明るさ感や光の色を感じる環境の中で過ごすと心身ともに安定するようです。
このことから、1日過ごされるお部屋の照明には、朝、昼、日中は、窓からの外光に合わせ補う程度に白く明るくすることをお勧めします。
※イメージは日中の太陽光
逆に、夜は電球色などの温かい光であまり明るくないように照らし、夕食の食卓や読書するなど必要なところだけを明るくする事をお勧めします。
※イメージは夕日や火の光
このように、昼と夜の「あかり」を意識して使い分けてみるだけで、自律神経系の交感神経が優位に働き、心身ともに快適な生活を過ごしやすくなります。
例えば、夜も昼間と同じような白く明るい光の中で過ごしていると、いざ寝ようとしてもなかなか寝付けなかったり、寝れてもぐっすりと安眠できず目覚めが悪くなったりします。
これも、目や体から入る光の情報が脳に送られることで生成されるホルモンの生体バランスが崩れることで起きる変調といえます。出来る事なら、家の主たる部屋には白い光と温かい光の両方を用意することが望ましいかと思います。そして、暗い時間に暗い場所を照らすだけの「照明」から・・・窓から入る自然光の量やその時の気分、また各部屋の用途に合わせて、朝、昼、夜とで、「あかり」を使い分けられるようにすることが、これからの住宅照明にとくに必要となってくる課題のひとつと考えます。