第553回 あかりの演出 「電気の日」 2017.03.17
放送日:2017年3月17日
「電気の日」
明日3月25日は「電気の日」という記念日になります。
電気といえば照明をイメージされる方も少なくないと思います。例えば家の中で電気を使う家電はいくつもありますが、「電気を付ける」といえば、エアコンでもテレビでもなく、誰もが照明を点灯される事と思います。電気=照明の関係性は昔から根強く残るようですが、実はこの電気の記念日も照明に深く関係しています。
以前の放送で「あかりの日」という記念日のお話をさせていただきましたが、覚えていらっしゃいますか?
「あかりの日」とは?
1879年の10月21日にエジソンによって開発された白熱電球が40時間点灯し実用的なものに至った、その偉業を称えて制定された記念日となります。
エジソンが白熱電球を実用化し一般に普及する以前の我々の日常生活における「あかり」といえば、必ず「炎」が必要でしたが、このエジソンの開発よって「あかり」から「光」と「熱」を分離させた事で、現在、1日24時間、昼も夜も人が活動できる「あかり」のある生活文化の原点となったといえます。
さて、あまりにも有名なこのエジソンの白熱電球ですが、この開発以前にも電気を使った「あかり」は存在したのでしょうか?
エジソン電球ほど実用的でなかったとはいえ、当時いくつかの電気灯が存在しました。そのひとつに「アーク灯」があります。「アーク灯」とは2本の尖らせた炭素棒に電極を取付け電気を流して放電させることで光を放つ放電灯になります。実はエジソンが実用的な白熱電球を開発する1年前、1878年(明治11年)に日本で初めてこの電気を使った「アーク灯」が東京銀座2丁目の外灯に点灯していたのです。この事柄を記念して昭和2年に日本電気協会によって3月25日を「電気の日」として制定されました。
その当時の様子が錦絵にも描かれており、そこに書かれている説明に「アーク灯の光があたかも白昼のごとき・・・」なんて言葉も残っているようです。一般的に蝋燭や行燈の「あかり」しかなかった当時の人にとっては、明るく眩しい「光」に映り当時、かなり話題となって大勢の見物客が連夜つめかけたといわれています。その明るさはロウソク2000本(※60Wの電球だとおよそ30個分)程と言われていますが、その光の全てが電極間の小さな1点から放射されることを考えると電気溶接の光と同じようなもので、直視できない程、眩しい光だったのだろうと想像できます。
この東京の銀座に「アーク灯」が点灯されたわずか2年後、上野駅に日本で初めてエジソン電球が点灯されて以降、「アーク灯」は紫外線や煤を生じたり、メンテナンス性の悪さ、点灯持続時間が短いなどを理由に白熱電球の特性を超えることができずに結局、街から自然と消滅していきました。その後、電球の普及速度を考えると「アーク灯」の寿命がいかに短かったことか・・・なんとも切ない話ですね
最後に、実は昨年4度目の復刻として、当時と同じ東京銀座の2丁目に「アーク灯」が現在建っているのです。残念ながら光源はLEDになってはいますが、記念碑と共にポール灯として当時の姿のままで銀座の街に佇んでいるようです。
このような「あかり」の歴史を後世に残す取り組みは、とても素晴らしい事に感じます。