第568回 あかりの演出 「見せない光」 2017.07.21
放送日:2017年7月21日
「見せない光」
今回は「見せない光」のお話をさせて頂ければと思います。
照明器具には、たくさんの種類があります。天井面に直に取付ける「シーリングライト」や穴を空け埋め込む形で取付ける「ダウンライト」、また、天井からコードなどで光源を吊下げる「ペンダントライト」、そして、壁面に取付ける器具から、床に置くものなど、細かな仕様や特性の違いも含めると多種多様にいろんな照明器具が存在します。
これら照明器具を組合せ使う際「光と影と色」のバランスを理解して、インテリアとどう調和させるかによって、雰囲気や居心地など、その空間の良し悪しが決まります。
その為に設置する照明器具を選ぶ時は、器具自体が光って主張するものと、質の良い光が出るのであれば、器具自体あまり目立たないほうが良い場合があります。
例えば、劇場などの舞台照明をイメージするとわかりやすいかと思いますが、観覧席から直接見えない位置、舞台の上部や劇場の一部などに器具を隠して、光だけで舞台に相応しい雰囲気を創り上げ、その光効果で観客の目を舞台に引き付ける演出効果を高める手法を取っています。
このような劇場の演出とまではいかないまでも、住宅や店舗など普段、日常で目に入る生活視点においてもギラギラ眩しい光源がいくつも目に入る空間に置かれると、視覚的な混乱を招きインテリアとの調和も崩れ、そのストレスから居心地の悪さに繋がる恐れがあります。そうならない為、一般用の照明器具においても極力ギラついた光源が目に入らないよう器具自体に工夫を凝らした種類が存在します。その一つが「グレアレス照明」です。
「グレアレス照明」とは直接、目に眩しい光源が見えないよう工夫された器具になります。例えば、ダウンライトで説明しますと、天井に穴を空け器具を設置しますが、その穴にランプを取付ける際、取付位置が浅いものだとランプの眩しい部分が視覚に入ることになります。これを緩和する為、眩しく光る部分を穴の奥、深い位置とすることで、器具の真下から覗かない限り、目線の角度的に眩しい部分が見えない作りになっている照明器具になります。このような眩しさを軽減する器具を適正な位置に取付けることで、リビングルームや寝室、また、落ち着いた飲食店や宿泊施設など、居心地良く、寛ぎを求めるような空間で演出効果を発揮します。とはいえ、眩しい光源を隠しても、器具が残るわけですね・・・照明の主光源がLEDに変わりつつある中で、照明器具もより小型化しています。
従来光源のものだと、どうしてもランプの大きさもあり、ある程度の照度を保とうとするとその大きさに合わせた穴が必要でしたが、LED照明の技術革新によって現在、ダウンライトの穴枠の外寸が30φを切る商品が普通に売られるようになってきています。
今後ますます開発がすすむことで、一見どこから光が出ているのかわからないくらい超小型化した「器具ごと見せない光」が使われ、お部屋から照明器具がなくなる日も近いかもですね