放送日:2017年7月28日

「朝のあかり」

 日頃、皆さんがお使いなる身近なあかりといえば、ご自宅の照明器具となるでしょう。照明器具といえば、太陽が沈み、辺りが薄暗くなり始めた頃から点灯し就寝までの夜間、夜暗くなってから、我々の生活を豊かに照らしているイメージかと思います。
 そんな夜の主役となる生活アイテム「照明器具」ですが、それとは逆に、太陽が昇り、辺りが明るくなり、目を覚ます朝の時間には、どんな使われ方をされているでしょうか?
 今回はそんな「朝のあかり」について少しお話できればと思います。

 「照明は暗くなったら点灯し明るくするもの」といった感覚が強いと思われます。また中には、夜、部屋を暗くしたままでいると、何となく目に悪いのではないか?なんて思う方もいらっしゃると思います。夜暗くなってからも部屋の照明で昼間のように明るい環境で過ごすことのできる現代人にとっては、確かに当たり前に感じることで、ごく自然な感覚なのかもしれません。
 しかしながら、このような人工照明によって、夜も明るく過ごすことのできるようになったのは、白熱電球が世界に普及した時期を起点と考えるならば、約130年前からとなります。人の寿命から考えると130年前といえばすごく昔に感じますが、何十万年とはるかに続いてきた長い人類史から考えるとたったの130年となります。このような明るい照明で生活する以前、人は、もちろん今のような人工照明はなく、日中の太陽光と夜使うわずかな火の光で生活してきました。このことからも、夜も昼間のように明るい現在のような照明環境が、人にとっては異常な環境の中で生活してるともいえます。もちろん、人工照明の進化に伴い我々の生活はより豊かになってきたといえます。
 その反面、これら光環境の変化によって、不眠症や睡眠不足からなるストレス過多、また自律神経系のバランスの崩れから起こる体の変調など・・・いわゆる現代病といわれる様々な健康面での弊害が増えているのも事実といえます。
 人の健康をつかさどる自律神経系には交換神経と副交感神経があり、このふたつの神経系がバランス良く機能することで健康的にも優位に働くとされています。このバランスを左右する要因のひとつが、目から入る光の情報にあります。 目や肌で感じた光情報は体内で電気信号となり脳に送られ、これら2つの神経系をスムーズに切り替えるスイッチの役割を果たします。それには、日が昇り明るくなると目を覚まし、日が沈み暗くなると睡眠に入るといった、太陽光の軌跡に合わせた光環境の中、規則正しい生活をおくることで整えられます。
 さて、冒頭でお伝えしました太陽が昇り、辺りが明るくなり、目を覚ます朝の時間帯に使う「朝のあかり」とは・・・これを現代の住環境に照らし合わせて考えてみましょう。
 簡単にいえば、朝の目覚めに合わせ照明を点灯してみるという事です。朝の時間、目から入る光の情報は、交換神経に切り替えるスイッチ的な役割を果たしてくれます。それにより、前日の就寝が遅かった場合でも体内時計にリセットを行い、自律神経系のバランスを保つのに優位に働き、その日、1日のスタートに向える体質づくりの基になります。
 朝の明るい時間に照明を点灯する場合、なんとなく不経済だなと思われるかもしれませんが、逆に夜の時間の照明の明るさを低くすることで、トータル的には電力の削減に繋がります。また、健康面においても適切な光環境に整えることで体調も改善されていきます。
 「朝のあかり」は忙しい現代人にとって健康を保つ為の賢いひとつの知恵となります