放送日:2018年6月1日

「子供と光」

 先週より、子供の目と光の関係を基に、子供の成長過程に応じてどのような光環境が望ましいのかお伝えしております。そこで今回は満6歳頃までの幼児期と光の関係性をもとに、最適な光環境はどんなものか考えてみたいと思います。
子供の目の生育上、視力や機能が安定するのが6歳頃までであることから、幼児期は大変に重要な時期となり、目に多くの影響を与える光環境に対して適切な配慮が望まれます。
 中でもこの幼児期に質の高い睡眠を取れる生活リズムとそれらを整える光環境の関係はとても重要な内容のひとつとなるのです。
 しかし現在、日本の子供の就寝時間はかなり遅くなっています。午後10時以降に寝る幼児は全体の3~4割になっているという調査結果も挙げられています。この原因としては、ひと昔前に比べても社会全体が夜型よりな生活スタイルになっている現状が挙げられます。
 ご家庭においても気軽にインターネットやゲーム、TVなど夜遅くまで利用する人が増えたことで、大人と同じく子供までも夜遅くまで活動する生活習慣になってしまっている傾向にあるからです。就寝時間が遅くなることは、もちろん質の良い睡眠時間が減ることになり、子供の健全な成長に様々な悪影響を及ぼす結果となります。

 人が質の良い睡眠を得るよう分泌されるホルモンに「メラトニン」があります。この「メラトニン」が正常に分泌されることで、安眠を誘うほか、新陳代謝を促して、疲れも取れ、病気の予防など、心理面・健康面においても優位に働くとされています。特に1歳から5歳までの間に最も多く分泌されることから、この幼児期に十分なメラトニンの分泌が得られるような生活習慣づくりの配慮が望まれます。
 ある調査結果に、幼児期に就寝時間が遅かった子は小学生になっても遅く寝る傾向が強くあり、就寝時刻の遅い子供は成績も低く、早い子供は成績が高いといった統計もあり、睡眠の質が学習能力に関係してくるという結果も挙げられます。幼児期に遅く寝ることが、その後の悪い生活習慣につながることを考慮すると、幼児期の規則正しい生活とそれらを整える光環境の役割はとても重要な内容となるわけです。
 このメラトニンですが、夜間に強い光を受け続けると分泌量が減少してしまう性質があります。つまり、夜・就寝までの間、部屋全体を照らすような照明の中、昼間のように明るい光環境で過ごすことは安眠を妨げる結果となるのです。

 そこで、メラトニンの分泌量を上手く増加させ、お子さんの安眠を誘う「あかり」による環境づくりの方法をお伝えします。130年程前に電灯照明が普及するまで人類は何十万年以上も太陽の光とわずかな火の光の中で生活してきました。その為、夕方から夜間にかけては、夕日や炎の光のように適度な明るさの赤みを帯びた光色の中で生活することが健康面・精神面においても安定するといえます。つまり夜間、この赤みを帯びた適度な光環境にお部屋の照明を調整するだけで、目から入った光の情報が脳に伝わり、夜になったから睡眠の準備に入ろうとし始め、メラトニンの分泌が高まっていきます。実生活で行うとすれば、せめて就寝する2~3時間前、お風呂上がりや夕食が終わった頃からお部屋のあかりを適度な明るさの電球色の柔らかな光に変えて、白く明るい光を避けるだけで、効果的に安眠を誘う体質づくりに繋がるようになります。
 ただし、睡眠薬など即効性のあるような薬をと違い、毎日の規則正しい生活の中で改善されるものなので、せめて2週間~1ヶ月程度はこの光環境を続けてみてください。気が付くといつも寝付きの悪かったはずのお子さんがすぅーっと寝入るようになると思います。
 
 幼児期は目を育てる大切な時期です。夜型の大人の生活に子供を巻き込まず、正しい認識を持ち子供の発育を助けるよう、しっかり光・環境を整えていってあげたいものです。