第690回 あかりの演出 「アイランドキッチンの照明」 2020.02.07
放送日:2020年2月7日
「アイランドキッチンの照明」
昨今、私の事務所の設計業務おいて、キッチンスペースのご提案をする際、アイランド型のキッチンを望まれるケースが多くなりました。また、一般的な住宅設計においても、吊り戸棚を設けず対面型キッチンカウンターを設置して、LDKを一体的のスペースとして利用することを好む方が多くなっている傾向にあります。
そこで今回は、昨今の流行りともいえるアイランド型キッチンの照明について、いろいろ考えてみたいと思います。
キッチンを吊戸棚のないアイランド型とすることで、隣接するリビング・ダイニングと天井が繋がり、LDKをひとつの大きな部屋として、一体的で広々とした空間が生まれます。
しかしながら、LDKを一体的に利用する場合、リビングやダイニングのように寛ぎや居心地を重視する照明と違い、キッチンの照明では、料理をつくる為の・・・言ってみれば寛ぎとは相反する機能的な光が必要になるため、LDK空間全体で照明の雰囲気を考える必要があります。そして、アイランド型やカウンター型などの開放的なキッチンであれば、なおさらリビング・ダイニングとの調和が大切になります。
例えば、場所ごとの明るさが極端に違うと、暗い部分が明るい部分との比較で、より暗く見えてしまうので、明るさのバランスが必要になったり、また、リビング・ダイニングは落ち着いた電球色の暖かい光なのに、キッチンは全般照明も白い光というのでは、LDKをひとつの部屋として見た時に違和感が生まれるでしょう。調理するときだけに使用する手元灯は白い光でもかまいませんが、全般照明用の光源は色温度(光色)を合わせて考えた方が望ましいでしょう。
壁に面したL型やI型のキッチンでは、壁面や吊戸棚の下に手元灯を設置するのが一般的ですが、手元灯のつけられないアイランド型や垂れ壁のないカウンター型では、天井からの光で手元を照らすことになります。その際はカウンター部分だけを照らすように配光角の狭いDLを数灯並べたり、グレアレスのライン照明を設置してリビング・ダイニング側に白い光がまわらないような照明計画の工夫が必要になります。
その他にも、間取り・内装、什器の仕上げから、単にアイランドキッチンといってもシンクのみ独立したものから、レンジとシンク、また全て独立したものと多種多様で、これら全ての条件を満たす照明計画をまとめるとなると大変な作業です。しかしながら必ず、意匠的にも機能的にも満たされる照明は創り出せるはずですので、これから新築や改装でアイランド型キッチンを検討される方は、今一度、照明に意識も持ち恰好良く、使いやすい自慢できるアイランド型キッチンのある豊かな生活を見つけてみてはいかがでしょう。