第709回 あかりの演出 「光の輝き」 2020.06.26
放送日:2020年6月26日
「光の輝き」
今回は「光の輝き」が人に与える影響について少し考えてみたいと思います。
日本語は、諸外国と比べてみても、同じ様な意味を持つ言葉であっても様々な表現のある豊かな言語といえます。中でも、光輝く様子を表わす言葉も幾つもあります。
例えば「「煌々」、「ちらちら」、「キラキラ」、「ギラギラ」、また、「燦々」、「赤々」など
中でも、「きらきら」と「ギラギラ」では、輝きの様子がかなり違って聞こえます。
「きらきら」という言葉は、光が反射して輝く様子をイメージさせ、星空や宝石、また水面に反射した光のように輝きに心地良さや美しさを感じるイメージといえますが、一方で「ギラギラ」という言葉からは、強烈な直射光が輝く様子を連想させ、目を背けたくなるような眩しさを言葉からイメージさせられます。
このように同じ光が輝く様子の中には眩しさを伴うことがあるのです。
一般には、眩しすぎると不快感が生じ、明るくても物が見えにくくなる現象が起こりやすくなります。英語ではこれを「グレア」といい、建物の用途を問わず照明を設計する際、このグレアが人の通常目線に入らないよう十分に配慮して設計を行う必要があるのです。
このような光の輝きが人に与える影響など「グレア」についての研究が、1910年代にアメリカで始まったとされ、その理由は白熱電球の普及がきっかけとなります。初期の白熱電球は今のような明るさはもちろんありませんでしたが、それでも当時の人にとっては、ロウソクや石油ランプのあかりに比べると眩しいほど明るく感じられたと推測します。
その後、白熱電球が生活光源として普及する過程の中で、明るさや点灯時間が増していくと同時に、「グレア」による不快感も増えていきたことで、ようやく一般にも「グレア」が問題視されるようになって、透明ガラスの裸電球から乳白グローブ電球や、電球の眩しさを防ぎながら光をほどよく透過させるセード付きの器具などが用いられるようになりました。
その後、1970年代に入りコンピューターが普及したことで、より目を酷使する作業が増えていきました。それによって、照明も明るさの恩恵を得ることと同じようにグレアをなくす動きがより社会的にも高まったといわれております。
このような光の眩しさが、ただ一時的に眩しいだけであれば、まだ良いのですが、日々生活する照明に「グレア」を感じる照明があった場合、その不快感やストレスの蓄積は、人の健康に大なり小なり影響を与えていくことになるので、注意していきたいものです。
これらグレアの影響も、個々の人や心理状態でも変わりますが、特に高齢者の方は、目の衰えにより強い直射光が目に入ると、その光が目の中で散乱しやすく、「グレア」を感じやすいといわれております。
光の中でも、温かな暖色系の光より、白い光が散乱しやすいので、眩しさを感じる光で生活のしづらさを感じる高齢の方は特に、白い光で過ごすのを止め、温かな暖色系の光で生活することをお薦めします。
高齢者が不快と感じる光を浴び続けると目に大きなストレスが蓄積されやすく、そのストレスから回復するのにも時間を要します。したがって、高齢の方は特に「グレア光」に敏感であることが望まれ、もっとグレアレス照明に関心を持つべきだと思います。