第710回 あかりの演出 「夜空に輝く星の光」 2020.07.03
放送日:2020年7月3日
「夜空に輝く星の光」
今回は来週7月7日の「七夕」にちなんで、夜空に輝く星の光の楽しみ方など、お伝えできればと思います。
日本では古来より、年初めの太陽に願いや思いを馳せる「初日の出」、秋の名月に収穫を祈願する「お月見」など、自然の光を敬い愛でるような風習がいくつかあります。
中でも七夕は、夜空に輝く星「天の川」を挟んで「織姫」と「彦星」が年に一度だけ会うことを許された日とされ、子供のころ笹竹の葉に折り紙で作った飾りや短冊に書いた願いを思い思いに吊下げ、夜空の星を眺める。といった経験は誰にでもあると思います。
この七夕の習慣、日本ではいつ頃から行われていたのでしょう?
日本では奈良時代に中国から伝わった「織姫」「彦星」の「星伝説」と「乞巧奠(きっこうでん)」などの風習が由来となり生まれ、宮中で広まったとされています。
「星伝説」の切ないストーリーは当時の人の心をつかみ、万葉集では130もの「星伝説」に関する歌が詠まれているほどです。
また「乞巧奠(きっこうでん)」は庭先の祭壇に針などを供えて星に祈りを捧げる中国の風習ですが、日本に伝わると、技巧や芸能の上達を願って宮中行事として行われるようになり、星を眺め、食物を供え、楽を奏でて詩歌を楽しみ、神木と考えられていた梶の葉に和歌を記して願い事するようになったようです。
その後、この風習は江戸時代頃になると一般の人々にも広まり、庶民にも楽しまれる行事として現在まで続いていくことになります。「織姫」と「彦星」の再会という願いを叶えることができることにあやかって、自分の願いことが叶うようにと日本の5色の短冊にいろいろな願い事を書いて笹や竹の葉に飾るといった現在の形になったようです。
今では、日本各地で七夕祭りがおこなわれており、笹竹に華やかな飾りやたくさんの人の願い書かれた短冊が飾られる夏の風物詩となっています。しかしながら、今年はコロナ禍の影響もあって、大きな夏祭りは自粛の傾向にあり、残念で仕方ありません・・・
大きな夏祭りやイベントの楽しみ方とは違いますが、今年の七夕の夜はご自宅などで、ご家族や大切な人らと、昔の人が心奪われた「織姫」と「彦星」の切ない物語を思いだしながら、願いを短冊に託し、静かに遥か遠くに輝く星の光を眺める・・・そんな贅沢な時間をすごされてみてはいかがでしょうか