放送日:2021年9月17日

「赤ちゃんに最適な“あかり”とは? その2」

 近年、住宅用の一般照明においてもLED照明が主流の生活光源となり、また目に刺激を与えるブルーライトの比率が高い、スマートフォンや薄型TVに使用されるLEDのデジタルディスプレイの普及によっても、我々を取り巻く光環境の急速な変化がみられます。このような光環境の変化に伴い、目の健康に対して配慮する必要性が増しており、特に成長過程にある赤ちゃんの目と光の関係は、生涯の目の健康に非常に影響を及ぼす内容であることから、日々の最適な光環境づくりは子供の健康を守る上でも重要な事柄と考えます。
 そこで今回も前回に引き続き、実際の育児において、様々な場面や時間に応じた最適な光環境の創り方や昨今のLEDの光への対処法など合わせ、「あかり」を考えていきたいと思います。

 まず、生後まもない赤ちゃんには「光」がどう見えているのでしょう?・・・実は
 明るさと暗さは区別できるものの視力は0.02程で視界はぼんやりしています。そして1歳頃になると視力も0.2程となり物の形の区別ができ始め、目で追うようになります。
 色彩認識についても最初はモノトーンの世界から、「赤」を認識できるようになり、次に「黄」「緑」「オレンジ」といった暖色系統の色を認識したのちに、さらに「紫」「青」といった寒色系統の色を認識していくと言われています。
 このように生後1年ぐらいにかけて五感を感じ取る脳の神経回路が急速に発達していくことになります。この成長過程の中で、五感のひとつ視覚から入る情報はとても多く、その外部刺激となる目から入る光の情報は脳の健やかな成長に密接に関わる為に、最適な光環境づくりは非常に大切な事柄といえるのです。
 
 そこで大切になるのが「サーカディアンリズム=体内時計」を整える光環境づくりです。
 「寝る子は育つ」というように成長過程にある赤ちゃんにとっての睡眠はとても重要で、神経系のリズムを育てる質の良い睡眠を誘う光環境づくりはとても重要となります。
 人は朝・昼は明るく、夜は暗くといった太陽の軌跡の中で生活してきたことで、それらに合わせた光環境の中で生活することが健康的にも優位に働くとされます。その為、現代のような照明で夜も昼間のように白く明るくした環境に置かれる事は、赤ちゃんにとって適切な光環境とはいえません。自律神経系のリズムの良い質の高い睡眠を取らせる為には、太陽が沈むように夕方からは赤味を帯びた電球色の照明として明るさを徐々に落としていき、最後には真っ暗な部屋で寝かすことが理想的な環境といえます。
 しかし、浅い眠りで昼も夜もなく寝たり起きたりする赤ちゃんにまかせ、睡眠を取らせていると、1日のリズムが整なわず、体内時計が狂うことでリズムが昼夜逆転して、夜泣きしやすくなったり、寝つきが悪くなったりする傾向があります。
 そこで、「明るくなったら起き、暗くなったら寝る」といった、決まった時間に寝起きさせ体内時計をリセットして規則正しい生活を過ごさせてあげることが大切になるのです。

 例えば、常に仰向けで寝ている生後まもない赤ちゃんにとって、部屋の明るい天井照明は、常に昼間太陽を見続けているような環境といえます。生後3~4か月までの赤ちゃんは「強制注視」という性質をもっており、天井吊りの照明器具の豆電球のようなわずかな光であっても、凝視してしまい、刺激となって睡眠の質を落としてしまう結果になります。
 夕方~夜間にかけては、太陽が沈むように室内の照明も徐々に明るさを落としていき、寝かしつける時は、極力真っ暗な環境で寝かすことがおススメです。スマホは厳禁!
 もし夜間常夜灯を点けるのであれば、コンセント式の足元灯やクリップ式のスポットライトを天井に向けるなどの対策や、普段から赤ちゃんの目に直接光が入らないようにする工夫に心がけたいものです。

 成長過程にある赤ちゃんの目と光の関係は、生涯の目の健康や自律神経系に非常に影響を及ぼす内容であることから、大人が正しい知識を持ち、最適な光環境を提供してあげることこそ、子供の健康を守る上でも最も重要な事柄と考えます。