放送日:2022年9月9日

「キッチン空間の照明 その1」

 今回より「キッチン空間の照明」について考えていきたいと思います。
 
 部屋の雰囲気や使い勝手に大きく影響を及ぼす照明ですが、細かい作業中心のキッチンでは、寛ぎを重視するリビングやダイニングの照明選びとは、また違い、ある意味寛ぎよりも、作業のしやすさを重視する機能性に富んだ照明選びが必要不可欠になります。
 キッチンは主に調理や配膳、また食器洗いなど、細かな作業を行う空間である事から、特に手元がよく見え、作業のしやすい光環境創りが大切になります。その為キッチン空間全体の明るさを確保する天井照明などの“全般照明”と、細かな作業を行う為に使う手元灯のような“局所照明”の併用がキッチン空間では理想的な照明の形といえます。では、“全般照明”と“局所照明”の併用が理想的な照明の形とお伝えしましたが、それはどんな「照明」になるのでしょう? 
 簡単にいえば、空間の基本的な明るさを確保する照明 “全般照明”と、作業場所だけをしっかり照らす照明“局所照明”、この2つの照明を組み合わせた形となります。
 まずキッチンは、物の出し入れを頻繁に行う場所ですので、全般照明には、影が出にくく、全体に光が広がり隅々まで見やすい照明が望ましく、光源となる器具の形状も面や線で発光するタイプを選ぶことで光がより拡散されます。また乳白色のセードに覆われたようなものは、さらに眩しさを軽減してくれるので、より使いやすくなります。そして、作業する手元を照らす“局所照明”については、手元をしっかり確認できる明るさの確保はもちろんのこと、食物の色を正確に確認できる照明が望ましい事から、出来るだけ演色性の高い光で、使う光の色も「昼光色」や「昼白色」といった昼間の太陽光に近い光色を選ぶことで物の色も正確に確認でき、作業のしやすい照明になります。
 このように、2つの照明手法の組合せが、理想的なキッチン照明の形となるのですが、近年、この照明の形だけでは対応のできない変化がみられるようになっているのです。その大きな理由のひとつに、現在の生活スタイルに調和したキッチン空間の変化にあります。
 この頃の日本の住宅では独立型のキッチンは非常に少なく、LDと繋がりのあるキッチンが主流になっています。少し前までは対面キッチン型が流行り多かったのですが、最近ではLDとさらに一体感のあるオープンキッチンが増えている現状にあります。つまり、使いやすいキッチン空間の変化に合わせ、照明の形も合わせて進化させる必要があるのです。
 まず、気になるのは光の色の違いです。キッチン側では、作業を重視した「昼白色」といった白っぽい光の色、LD側では、寛ぎを重視した「電球色」といった温かみのある色と、人に与える心理効果の相反する光の色を、LDと一体となるオープンキッチンのような空間で安易に点灯した場合、使いやすさや雰囲気に違和感を生じる結果になるのです。

 そこで次回は、今の幅広いキッチン空間の仕様にあった照明の有り方などお伝えします。