放送日:2015年3月20日

「輝度による演出効果」

 前回、照明計画を行う際の「これからの明るさ感」として、建築と照明をトータルに考え効果的にあかりの演出するために、照明器具の「ルクス」数など数値の明るさだけでなく、光源に照らされた内装材、家具などの輝きや拡散反射などによる明るさ感をあらわす「輝度」というものが重要であるとお伝えしましたが、今回はこの「輝度による演出効果」についてお伝えしたいと思います。
 照明器具など、光源から発する光の量をあらわす照度「ルクス」や、ランプの色温度をあらわす「昼白色」や「電球色」などの言葉については、見たり聞いたりしたことはあっても、「輝度」という言葉は、一般の方にとって、あまり馴染みのない言葉だと思われます。
 そもそも「輝度」とは何か・・・光源自体や照らされた面の輝きや明るさの加減の事になります、簡単にいいますと、人の目に入ってくる明るさ感やまぶしさの度合いをいいます。
 「輝度」の単位はcd/㎡(カンデラ/平方メートル)で表し数値化されていますが、照度「ルクス」などほぼ変動のない数値と違い、「輝度」は見る方向や角度によって変動しますし、また、照明の条件が同じでも、照らされた物体によっても異なってきます。
 例えば、シェード付きの照明器具の電球を丸見えになる角度で見た場合と、シェードで隠れる角度で見た場合とでは、目に入り感じる明るさの度合いがまったく異なると思います。
 また、同じ光を当てても黒っぽい面は光の反射が抑制されるため輝度は、白い面に光を当てた場合よりも低くなります。いくら照度の高い照明器具に取換えたり、照明器具自体の数を増やし数値的に空間の明るさをアップしたとしても実際、その光に照らされる床、壁、天井などの面や家具などの物体が、暗めの色味でただ統一してあると、人が感じる明るさ感としては思うより明るくは感じられないことになります。つまり、効果的にあかりの演出を行う際は照明だけではなく、その光に照らされる物の見え方、この輝度の特性がとても重要となります。
これら、輝度の特性を活かすことのできる空間とは何か・・・
 例えば、最近よく見かける間接照明ですが、柔らかい間接光によって壁や天井などの大きな面を照らす手法となります、その照らされる壁や天井の素材に、安易に暗めの色の壁紙や濃い色の木材やタイルなどの内装材を使った場合、輝度も低下し、せっかくの間接照明のあかりを台無しにします。  

 もちろん、建物の用途や条件によっても様々でしょうが、特に新築や改装をお考えの方は、照明と建築を別々のものとして考えるのではなく、照明を活かす建築、建築を活かす照明として、この輝度による演出効果をもとに計画を進められると良ろしいかと思います。