放送日:2018年1月12日

「有難い照明計画」

 今回は「有難い照明計画」と題しまして、建物を建てる際に必要な照明計画について、考えてみたいと思います。
 皆さんが暮らす住まいの新築やリフォームを行う際、自分の好みに合うハウスメーカーや工務店、また設計事務所を選択し、ご依頼されるのが一般的な流れになると思われます。
 ご依頼された設計者に思いを伝え、建物の大きさや形、間取りなどを決め、内・外装材や設備機器の選定と徐々に様々な思いを形にして進んでいくことになりますが、その過程の中で必要になる計画のひとつに照明計画があります。
照明計画はどの部屋にどんな照明をどう照らすかと考え、各空間の仕上げの明るさ感や雰囲気を決定づける重要な工程で、主に使用する器具の配置や台数を完成前に決定します。
 現在、建築設計者やインテリアデザイナーの多くは照明計画の重要性を理解し、空間創造のレベルアップを意識されていらっしゃる事と思います。しかしながら、現実的には、建築・設備全般の仕上げや納まりを総合的に検討する中で、照明に特化した知識やスキルを高め、経験を積むことは難しい作業となるでしょう。そこで、設計者が取る方法として、身近な照明の専門家となる照明器具のメーカーに照明プランを依頼する場合が多くあります。主要なメーカーは社内に照明プランナーやデザイナーを抱えており、決まった間取りの平面図などに対して、適正な照明の選定や配置を行う作業を請け負ってくれます。
 主要なメーカーの照明プランとなれば間違いないと思われるかもしれませんが、全てがそうともいえないのです。このような照明プランが立てられるのは、主に配線工事の前、建築計画の始めの頃になります。その為、計画途中に間取りや内装材の色・素材などを変更したりすることで、始めは適正であったはずの照明計画が狂ってくるケースがあります。
 事例は様々ありますが、例えば・・・照らすエアコン、反射材etc
 そのようなケースにならぬよう取られる方法のひとつに「無難な照明計画」があります。この「無難」という言葉の意味を調べると、“間違いがないこと。特に優れているわけではないが格別な欠点も見当たらないこと。”とあります。→良いのか悪いのか(笑
 つまり、計画が多少変更しても、当たり障りがなく、数値的にもある一定の明るさを保つよう作成された照明計画が施工される事になります。当然、全てがという訳ではなく、竣工後、最後までしっかり設計監理をされている設計者の方々も多くいらっしゃいます。
 
 しかしながら現実に、工事途中の建築・設備などの変更に対して、照明計画の柔軟な適正対応ができていない現場があります。中には仕上がりの明るさ感に納得されていないお施主様に対して、内装の輝度に全く配慮もせず平均照度の数値を盾にお施主様を納得させようとする設計者がいるのも事実です。こうなると、照明デザインの放棄としか言わざるを得ません。
 
 確かに照明は建築の中でも、実際に完成してみないと明確な仕上りをイメージするのはなかなか難しい分野であると思います。だからといって難しさの無い無難な方法に進むというのはいかがなものでしょうか。困難が無いと「無難」になりますが、困難が有ると「有難い」となります。困難が有ってこそお施主様にも満足して頂ける「有難い照明計画」になるのではないでしょうか。