放送日:2019年1月25日

「照明空間 明暗の調和」

 今回は「照明空間 明暗の調和」と題しまして、主に室内照明における明暗バランス・メリハリなど効果的に空間を演出する仕組みや考え方など、お伝えできればと思います。
 日本では高度成長期以降より、白く明るい蛍光灯が急速に普及するとともに「明るさ至上主義」といいますか、照明は「なるべく明るい方が良い」「明るく万遍なく照らさなくてはならない」といった安易な捉え方が定着していき、そのような感覚が今でも根強く残っております。
 ただ、明るい空間が悪いというわけではなく、不特定多数の人が集まる学校やオフィスなどの均一に万遍なく室内を照らすことを目的とする空間では良いのかもしれませんが、例えば商品を陳列しているような店舗などで、均一に万遍なく室内を照明した場合、ポイントとなる商品が目立たずに魅力が薄れる結果となります。また、たくさんのスポットライトで効果的に商品を照明していたとしても、さらに明るい天井照明が万遍なく設置されていれば、せっかくのスポットライトによる強調した効果が薄れ、平凡でぼんやりとした印象になってしまいます。
 つまり、暗い部分があるからこそ明るく照らした部分が際立って見え、空間の中で明るさの明暗バランスやメリハリ、リズムが生まれることになるのです。
室内の仕様用途を問わず、ただ万遍なく照明するのではなく、照らしたい場所をしっかり照らし、照らさなくても良い箇所の光を減らすといった、照明による効果的な演出をすることによって、無駄な光を無くせて省エネにもなりますし、ワンランクアップした雰囲気づくりも可能となるのです。
 また、このような明るさの感覚は、室内の内装の色によっても変わってきます。白の多い内装では反射光も多くなり、比較的に少ない照明でも十分な明るさが得られますが、逆に暗めな色の多い内装は反射率が下がる為、かなりの数の照明が必要になります。そもそも暗い色の室内を全体的に明るくすることに矛盾がある為、暗い色の空間では、それなりに照明も内装と明るさの相性を考慮して計画する必要があります。
 そして、光の色にも相性があり、光を照らしたい面や物の色の見え方を考える必要があります。例えば、シックな雰囲気のあるモノトーンが多い空間では、電球色よりは少し白を混ぜた4000K以上の光で構成する方が、より繊細でクールな印象を強調しやすくなり、ナチュラル系な色味や暖色系の多い空間では、電球色を使うことで、より柔らかく落ち着いた雰囲気を創りやすくなります。

 このように、“光の照らし方”、“光に照らされる物の色”、“光の色”この3つの要素に明るさ明暗の調和を演出することで、魅力のある空間の雰囲気づくりが可能となるのです。