放送日:2019年1月24日

「行灯(あんどん)の光」

 今回は「行灯(あんどん)の光」についてお話したいと思います。
 行灯(あんどん)は日本の伝統的な明かりであり、照明器具となります。しかし、どのようなものを行灯というかは、あまりよく知られていないかと思います。

 行灯とは、主に木や竹で形作った枠を和紙で覆った照明器具となります。今のような人工の照明もない時代では、日が暮れると同時に真っ暗な闇に落ちる夜の時間、人々が頼りにしたのが、この行灯の明かりでした。
 器具の中には油皿があり、イ草や綿糸で作った灯心を入れて火を灯したようで、その明るさは、現代の一般的な電球60W相当の明るさに比べると、だいたい70~50分の1程度の明るさしかなかったようです。
 灯心の数を増やせば明るさのコントロールも多少可能でしたが、その分油の消費も早く不経済となり、火を灯す燃料の油が当時貴重であったこともあり、できるだけわずかな光で夜を過ごしていたと推測されます。
 もし昔の人が、今の電球のあかりで煌々と灯る行灯を見たら凄く驚くことでしょうね。

 ひと言に行灯といっても、部屋の中に置くタイプから、手持ちタイプ、また屋外に掛けてお店の屋号などを表記して今でいうサイン看板の役割をしたものなど、様々なスタイルがありましたが、今ではもちろん電球を内蔵した行灯型器具となり、デザインも昔からの行灯の面影を残しながらも、モダンで機能的に現代生活を満たす照明器具として存在します。
 昔ながらのデザインで木や竹で形作られた行灯器具は純和風のインテリアに、もちろん合いますが、昨今では、現代の建築様式に合わせた形態のものや、日本文化の影響を受けた海外デザイナーの作品など、和風だけでなく洋室にも調和するようなモダンで機能的な行灯が多く創られ、その優しく柔らかな光は、特に欧米でも人気がある照明器具として高い評価を得ているようです。

 今だからこそ、この行灯のあかり・・・
 夜も昼のように明るく欧米化する現代において、この日本古来の心地良いあかりに包まれる時間は、日本人の心を癒す特別な明かりといえるかもしれませんね