放送日:2021年1月15日

「暗さ・陰影の演出 その1」

 毎週「あかりの演出」というコーナー名で、皆さんの身近にある光についてお伝えしていますが、今回から「暗さ・陰影の演出」と題して考えていきたいと思います。

 日頃、日中の明るい時間に、仕事や学校、自宅で家事をされるなど活動的な時間を過ごされていると思います。太陽の自然光もそうですが、その際、ほとんどの方が上から降り注ぐ昼間のような白く明るい光の中で過ごされていると思います。
 この昼間の白く明るい光環境は、快活に過ごす活動的な時間には適しています。しかし日も沈み暗くなり仕事や家事も一段落して、心を落ち着け心身ともにリラックスしたい時間を過ごすには、昼間のような白く明るい光環境は、不適な光環境といえます。
 なぜなら・・・理由を少々説明
 やはりこのような、心や体の疲れを癒す寛ぎの時間を快適に過ごすには、夕日のように暖かな光色で適度に照らす「あかり」の中、ある程度の「暗さ」が最適といえます。

 例えば、仕事帰りに立ち寄るバーなど、店内はカウンターやボトル棚が適度に明るくなっているだけで、店全般には暗い空間となっています。また他にも落ち着いてお酒を楽しむような店でも、いくつかの演出照明はあるでしょうがテーブルを照らす光以外、店内はうす暗さを保つ空間になっています。
 何故、バーなど夜の癒しを求める場所が暗いと落ち着くのでしょう?
実は、あえて暗くすることで現れる陰影に、とても効果的な理由があるのです。

 人は何十万年もの間、昼間は太陽の光、夜間は焚火などのわずかな明かりだけで生活してきた為、夜間、外の暗さに不安や緊張を感じる中で、炎の光を見ると自然と心に安心感を持ち、また、その暖かな光が創り出す陰影を見ると穏やかな昂揚感とともに心が安らぐ気持ちになる効果が心身ともに長い人類史の中で備わってきたといわれています。
 例⇒暖炉の光、キャンプファイヤーの光、祭事の提灯・行燈、イルミネーションなど
 つまり人が精神的に宿す癒しの「あかり」とは、暗さの中で現れる陰影にその効果が心理的に備わっているのです。

 このような癒しの「あかり」を、夜のお店だけでなく、ご自宅で再現できるとしたら・・・
 現在、夜間の外出など制限される今、ご自宅で過ごす夜のリラックスする寛ぎの時間の演出として最適な「暗さ・陰影の演出」になるのかと思います。
 
 次回はご自宅でできる「暗さ・陰影の演出」をするいくつかポイントを簡単に説明する。