放送日:2021年4月23日

「健康と光について…その1」

 今回から「健康と光」と題して、人が健康に過ごしていく為の光の役割などについて、今一度考えていきたいと思います。
 日々、我々の暮らしを豊かに照らしている照明ですが、140年程前にエジソンが実用性の高い白熱電球の開発に成功して以降、ロウソクなどのわずか直火を使った生活光源から、電気を使った明るい照明に変化していった事により、夜でも明るく昼間と同じような生活ができるようになりました。そして今では、白熱電球や蛍光灯から、LEDや有機ELと、主流の生活光源もより便利な光へと変化しており、これら電気で発光する人工の光は、今後ますます我々の生活を豊かにする可能性を持つ便利なツールとなっていくでしょう。
 しかし近年、豊かで便利なはずの光が人に与える影響について様々な研究結果により、光から恩恵を受ける一方で、その光による弊害も問題視されるようになっています。
 
 人類が炎を利用し始めた何十万年も前、有史以前から人間は朝日が昇るとともに起きて、日中は、明るい光の中で活動をし、夕暮れになると赤味を帯び始める適度な明るさの光の中で身体をクールダウンし始め、日が沈むと共に身体を休め、睡眠に入るという生活を続けてきました。  
 しかし実は、人が夜も明るい環境で過ごすことのできる人工の光を手に入れてから、たった140年であり、この光環境の急激な変化に本質的な身体機能が馴染んでいない状況にあるといえます。
 地球の自転に沿って変化する太陽光の明るさや光の色の中で生活し続けてきた人間は、それら目から入る様々な光の情報が脳に伝わり、その情報を基に脳から体の各部神経系にその働きが伝達される仕組みが本質的に備わっています。つまり太陽光の時間の変化に逆らって継続して過ごすことは、決して健康的に優位に働くとはいえません
■朝の目覚めにおいて・・・(快晴と雨の日etc)→(明るさの足りない白色光)
■夕暮れから夜、睡眠まで・・・(夕・夜間に昼間の光を使うことの弊害etc)

 人は、毎日の繰り返される明るさや光色の変化に応じて、身体的なことだけでなく、心理的・精神的にも多くの影響を光環境から受けながら生活し続けているのです。

 WHO世界保健機関の健康の定義によると「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態であることをいう。」とあります。つまり、体だけでなく精神的にも満たされることが必要である訳です。このことからも人の心理・身体機能を左右する「あかり」は健康的な生活をおくる為、その役割は大きいといえ、光が人に及ぼす影響について正しく理解し、賢い光の選択と共に健康的に暮らしていくことができればと考えます。
 
 そこで次回も様々な角度から健康と光を考え、光との上手な付き合い方を探っていきたいと思います。