放送日:2021年5月2日

「健康と光について…その2」

 前回より「健康と光」と題して、人が健康に過ごしていく為の光の役割などについて、お伝えしておりますが、2回目となる今回は、光が人にもたらす弊害「光害:ひかりがい」について、ある事例をもとにお伝えしたいと思います。

 従来の生活光源に比べLED照明は、長寿命で、消費電力も少なくなど、様々な長所が市場で謳われ、今では白熱電球や蛍光灯に代わり、LED照明が主流の時代になっています。
 しかしながら、そんなLED照明も良い事ばかりというわけでなく、一般ユーザーの中には「LED照明のおかげで、ひどい目にあっている」と訴える方もいらっしゃるようです。

 ある高齢者向けマンションを購入され入居した80歳台の方の事例では、入居後すぐに、館内に設置されたLED光源が多く、眩しすぎることに気づかれたようです。
 実はこのマンション、日本工業規格(JIS)による用途別の標準的な明るさの目安さえも無視されている建物だったようで、“マンションの照明は明るくした方が見栄えがいい、室内も豪華に見える。見学にくる入居希望者に対する効果を狙った安易な営業的な判断による計画で建てられた高齢者向けマンションだったようです。”
 入居後しばらくして、体調が思わしくないので、医師の診察を受けたところ、その結果、「光による害が原因の自律神経失調症」と診断されました。
 夜間の明る過ぎる照明でサーカディアンリズム(:体内時計)が狂い、身体が夜を朝と勘違いして眠れず、これがストレスとなり、筋肉痛、朝のむかつきを併発、やる気もそがれるといった症状のようです。確かに症状には個人差はあるでしょうが、さらに、この方の場合は深刻で、室内ではサングラスをかけて過ごし、浴室では照明を消し、脱衣所の灯りを頼りに湯船につかるなど、不都合な生活が続けているとのことです。マンション側に対応するように言っても、「マンション側は暗くすると、お年寄りの転倒事故が増えるといって明るさを調整してくれないとのことです。」・・・実は、逆でただ明る過ぎて眩しい環境では転ぶ人のほうが多いのです。
 確かに目の機能は年齢により低下することもあり、成人に比べ高齢者の方は2~3倍の明るさが必要といわれています。しかしながら、夕暮れから就寝前までの間ずっと通常の2~3倍の明るさで部屋を照らし続けるでは光害は直りません。キッチンやダイニングテーブル、また読書などの視作業を行う場所や手元だけを照らす局所照明を設置することで、部屋全体の明るさは落としつつ、手元は見やすくしっかり照らすといった「あかりの工夫」を計画に入れることで、光による害もかなり軽減でき、住みよさも改善されます。
 今回お伝えしたお話はほんの一例ですが、昼と夜それぞれに適正な光環境は必ずあり、それらを意識することは、長い目で考えると必ず健康的に優位に働く「あかりの演出」となります。

 清潔感ある白に統一された内装に明るい照明・・・確かに魅力的に見えるでしょう。
 しかしながら、くれぐれもご購入される前は照明のチェックを必ず忘れずにしましょう。

 では次回は、光害の中でも最近よく耳にする言葉「ブルーライト」について今一度考えてみたいと思います。