放送日:2022年9月16日

「キッチン空間の照明 その2」

 今回も「キッチン空間の照明」についてお伝えしていきたいと思います。

 部屋の雰囲気や使い勝手に大きく影響を及ぼす照明ですが、細かい作業中心のキッチンでは、寛ぎを重視するリビングやダイニングの照明選びとは、また違い、ある意味寛ぎよりも、作業のしやすさなど、機能性を重視した照明選びが必要不可欠になります。
 キッチンの作業空間では、物の出し入れを頻繁に行うことで動きが多くなることから、空間全体に光が隅々まで広がり影が出にくく、物の確認がしやすい照明とする「全般照明」と、調理など細かな作業を行う手元を照らす照明とする「局所照明」、この2つの照明手法の併用が、機能性を重視するキッチンスペースでの理想的な照明の形とされてきました。

 しかしながら近年、この照明の形だけでは対応のできない変化がみられるようになっているのです。
 その大きな理由のひとつに、現在のキッチン空間が、LDと繋がりのあるキッチンが主流になっていることにあります。少し前までは対面キッチン型が流行り多かったのですが、最近ではLDとの間に下がり壁などの仕切りが全くなく、LDKが一体感のあるひとつの空間となる、オープンキッチンが増えている現状にあるからです。つまり、このようなキッチン空間の変化は、作業の光と、寛ぎの光が同じ空間に混ざることになるのです。

 まず、気になるのは光の色の違いです。キッチン側では、作業を重視した「昼白色」といった白っぽい光の色、LD側では、寛ぎを重視した「電球色」といった温かみのある色と、人に与える心理効果の相反する光の色を、LDと一体となるオープンキッチンのような空間で安易に点灯した場合、使いやすさや雰囲気に違和感を生じる結果になります。
 その為、仕切りのないオープンキッチンでは、キッチン側の光がLD側にいかないようにする工夫が必要となるのです。
 例えば、ダイニングと隣接するキッチンカウンターの直上部に設置する局所照明は、ダイニング側に光がいかないように、配光の向きを調整できる照明を天井照明に選択したり、或いは、スイッチひとつで光の色を切り替えることのできる器具を選択するなどの方法があります。また、キッチンスペース全体を照らす「全般照明」に電球色を選ぶことで、違和感を無くし、見た目の統一感を図るのも効果的です。もちろん、ご家庭によって選ばれるオープンキッチンの仕様も異なるでしょうが、それぞれに思い入れを持たれ選択されたオープンキッチンです。その後長い年月を過ごすスペースです。隣接するLDとの違和感が出ないように、使いやすく見た目も美しい自慢のスペースとなるよう、計画される際は、内装・キッチンだけでなく、そこに照明も合わせて検討されることを強くお奨めします。